2014年10月号の記事
専門職種や企業の規模などに応じた新たな助成金制度創設・既存制度拡充などできめ細かな人材支援を行う。地方建設産業界で人気のある「建設労働者確保育成助成金」の事業コースも拡充する。必要経費は平成27年度予算の概算要求に盛り込んだ。
5年間で1万8,000人の人材確保を目指す新施策『建設労働者緊急育成支援対策』は、(1)建設産業界と国が連携して訓練生募集から座学・実習、企業への就職支援までパッケージで実施、(2)ゼネコンが傘下の協力企業を任意団体化、認定職業訓練の実施経費を助成、(3)建設企業が取り組むキャリア形成訓練の助成金の拡充と、対象を中小企業だけでなく、大企業・中堅企業にも拡大した3事業が柱。
このうち新規制度として創設する「建設労働者緊急育成支援事業」は、建設業界に入職していない段階で、新卒者や未就職者、離転職者の職業訓練を行う場合に助成金などで支援するのが大きな特徴。いわば業界入職のための事前囲い込みへの支援。
具体的には、国と建設業界が連携した新たな取組みで、不足する技能職種にかかわる訓練生の募集から、1−6カ月の座学・実習の実施、企業への就職支援までパッケージで進める。建専連など専門工事業団体や建設業振興基金などに事業の委託を想定し、富士教育訓練センターや三田建設技能研修センター、ものつくり大学などで実習を行う予定。初年度の平成27年度は600人程度の養成を見込む。
在職者向けでは、認定職業訓練制度を拡充する。既存制度でほとんど使われていない広域団体認定訓練を建設産業界が使いやすいようにする。ゼネコンなどが傘下の協力企業を任意団体化し、その任意団体が都道府県知事の認定を受け、協力企業の従業員を対象とした認定職業訓練を実施した場合に経費の2分の1を助成する。
認定には3つの都道府県以上にまたがる任意団体とすることなどが要件だ。厚生労働省によると、上場ゼネコンや地域の有力建設企業による団体化を想定しているという。平成27年度は10団体程度の認定を見込む。任意団体を職業訓練法人にした場合は、建設労働者確保育成助成金から一定額の運営費、施設・設備費用の2分の1(上限3億円)の助成も受けることができる。
キャリア形成促進助成金では、系列企業やグループ企業などが連携したり、企業が単独で従業員に実習と座学を組み合わせた訓練を実施した場合、訓練費用と賃金への助成を拡充する。また、既存制度は中小企業が対象だが、平成27年度から大企業・中堅企業に対しても助成を始める。
訓練経費の助成は中小企業が2分の1から3分の2に引き上げる。大企業・中堅企業は2分の1となる。賃金助成も企業規模別に行う。この助成金の概算要求のうち、建設産業分は約4億円とみられる。厚生労働省では「対策は国土交通省と連携して実施する。建設産業界は主体的権限を持って積極的に取り組んでほしい。ゼネコンは人材確保のけん引役を努めてもらいたい」(職業能力開発局)と話している。
建設など人材不足重点4分野の人材確保・育成対策は、厚生労働省の「人材不足分野等における人材確保・育成対策推進会議」がまとめた。建設分野の対策は、ほかの分野にもかかわる分野横断施策も含め、7項目で構成している。また、人材確保に向けた雇用管理改善促進事業に新規着手する。建設人材不足へ対応するため、3つの事業によって建設分野の事業主(企業)などによる訓練を促進し、人材を確保・育成する。