2015年7月号の記事
国交省は、6月8日に「国土交通月例経済(5月号)」を公表した。
6月8日に内閣府が発表した2015年1〜3月期のGDP(二次速報)は、実質で年率3.9%増と二期連続のプラスで、一次速報の年率2.4%増から大幅な上方修正となった。設備投資が1〜3月期の法人企業統計等をもとに改訂され、前期比で一次速報の0.4%増から2.7%増に大幅に上方修正されたことが反映された。
5月の月例経済報告では、個人消費について「持ち直しの兆しがみられる」と10カ月ぶりに判断が引き上げられ、また、6月の月例経済報告でも、設備投資について「このところ持ち直しの動きがみられる」と6カ月ぶりに判断が引き上げられた(ただし、基調判断は「緩やかな回復基調が続いている」と据え置かれた)。
公共工事受注額(3月)は、総計(1件あたり500万円以上の工事)で、前年同月比9.9%減と前年同月比で2カ月連続の減少となった。最新データ(6月10日公表)の4月分では、国の機関は前年同月比61.8%減、地方の機関は同7.5%減で、全体として同44.4%減と大幅な減少で、前年同月比で3カ月連続の減少となった。
内閣府が発表した2015年1〜3月期のGDP(二次速報)では、公共投資は前期比1.5%減と4四半期ぶりのマイナスで、一次速報(前期比1.4%減)より下方修正された。6月の月例経済報告では、公共投資について「総じて弱い動きとなっている」「先行きについては、弱い動きが続くことが見込まれる」とされたが、公共投資は、今後もそのとおりの動きとなるであろう。
新設住宅着工戸数(4月)は、前年同月比で持家、貸家は減少したが、分譲住宅が増加したため、総計75,617戸(前年同月比0.4%増)と2カ月連続の増加となった。年率換算値(季節調整済)は91.3万戸(前月比0.7%減)となり、3カ月ぶりの減少となった。
持家着工は、前年同月と比べて2.1%減少し、15カ月連続の減少となったが、季節調整値の前月比では1.3%増加した。
貸家着工は、相続増税の節税対策等もあって前年同月比の減少幅は微減にとどまっていたが、4月は前年同月と比べて1.8%減少し、2カ月ぶりの減少となった。季節調整値の前月比でも5.4%減少した。
分譲住宅の着工は、前年同月と比べて7.2%増加し、2カ月ぶりの増加となり、季節調整値の前月比でも9.7%増加した。
住宅の着工について、先行指標である5月の受注速報をみると、持家(大手5社平均)、貸家(大手3社平均)ともに10月以降、8カ月連続してプラスである。国交省も「住宅着工は、消費税率引上げにともなう駆け込み需要の反動減の影響が薄れており、緩やかに持ち直しているとみている」とした。5月の月例経済報告でも、住宅建設については「持ち直しの動きがみられる」と4カ月ぶりに判断が引き上げられ、6月の月例経済報告でも判断は維持された。
民間非居住建築物着工床面積(4月)は427万m²、前年同月比7.2%増、先月の減少から再びの増加となった。前年同月比で、工場は4カ月連続の増加、倉庫は先月の減少から再びの増加となったが、事務所は4カ月ぶりの減少、店舗は5カ月連続の減少となり、全体で増加となった。
(一財)建設物価調査会の「民間企業設備投資動向調査」(平成27年3月調査)では、建設投資(計画)の動向をみると、全産業で4〜6月期は前年同期比で11.9%の減少、7〜9月期は同8.4%の減少となる見込みであるとの結果であった。
日銀の3月短観では、大企業の2015年度の設備投資計画は、前年度比で全産業では1.2%減、製造業は5.0%増、非製造業は4.1%減だったが、6月1日に日本経済新聞社が発表した平成27年度の設備投資動向調査(上場企業と資本金1億円以上の有力企業(1,219社)が集計対象)では、平成26年度実績比で全産業が10.5%増、製造業が17.3%増、非製造業が2.0%増となっている。調査により設備投資計画の結果はさまざまで、強弱入り混じっている。
企業業績の改善にともなう潤沢な手元資金を背景に、これまで投資が先送りされてきたことにより老朽化した設備の潜在的な更新需要は大きく、2年以上続く円安の継続による生産の国内回帰の動きもみられ、今後、設備投資は持ち直すと予想される。
ただし、設備の更新投資が中心で、能力増強のための積極的な設備投資の拡大までには至っておらず、このため、建設投資の動向も勢いに欠ける状況なのであろう。