2015年9月号の記事
国交省は8月10日に「国土交通月例経済(7月号)」を公表した。
8月17日に内閣府が発表した平成27年4〜6月期のGDP(一次速報)は、実質で年率1.6%減となり3四半期ぶりのマイナス成長となった。個人消費が自動車販売の減少や天候不順により落ち込み、輸出も中国等の景気減速で低迷しているのが主な要因だ。
民間調査機関も年率で1%台半ばのマイナスを予測していたところが多かったので、おおむね想定の範囲であり、落ち込みは一時的との声が大勢だ。内閣府が8月6日に発表した6月の景気動向指数(速報)は、景気の現状を示す一致指数が前月比で0.7ポイント上昇の112.0となり2カ月ぶりの上昇、景気の先行きに対する予測に参照される先行指数が、前月比で1.2ポイント上昇の107.2となり4カ月連続の上昇である。また、民間調査機関も7〜9月期のGDPは、年率で2%弱のプラス成長を予測しているところが多い。
公共工事受注額(5月)は、総計(1件あたり500万円以上の工事)で、前年同月比28.7%減と前年同月比で4カ月連続の減少となった。最新データ(8月10日公表)の6月分では、国の機関は前年同月比8.2%減、地方の機関は同2.4%減で、全体として同4.2%減と大幅な減少で、前年同月比で5カ月連続の減少となった。
4〜6月期のGDP(一次速報)では、公的固定資本形成は、実質で前期比2.6%増と2四半期ぶりに増加したが、7月の月例経済報告にあったとおり、公共投資について「総じて弱い動き」となっており、「先行きについては、弱い動きが続くことが見込まれる」であろう。
新設住宅着工戸数(6月)は、前年同月比で持家、貸家、分譲住宅のいずれも増加し、総計88,118戸(前年同月比16.3%増)と4カ月連続の増加となった。年率換算値(季節調整済)は103.3万戸(前月比13.4%増)となり、3カ月ぶりの増加で、100万戸を超す数字となったのは18カ月ぶりだ。
持家着工は、前年同月と比べて7.2%増加し、16カ月ぶりの増加となった5月に引き続いて2カ月連続の増加となり、季節調整値の前月比でも9.5%増加した。
貸家着工は、相続増税の節税対策等もあって前年同月比の減少幅は微減にとどまっていたが、6月は前年同月と比べて14.6%増加し、2カ月連続の増加となった。季節調整値の前月比では10.5%増加した。
分譲住宅の着工は、前年同月と比べて31.3%増加し、3カ月連続の増加となり、季節調整値の前月比でも22.1%増加した。とくに、マンションは前年同月と比べて82.8%の大幅な増加となった。
4〜6月期のGDP(一次速報)でも、住宅は、実質で前期比1.9%増と2四半期連続の回復で、住宅着工の先行指標である7月の受注速報を見ると、持家(大手5社平均)、貸家(大手3社平均)ともに昨年10月以降、10カ月連続してプラスだ。国交省も先月に引き続き「住宅着工は、消費税率引き上げにともなう駆け込み需要の反動減の影響が薄れ、持ち直しているとみている」とし、加えて「反動減の影響が大きかった持家についても、2カ月連続で増加となった。今般の経済対策等の効果が住宅着工に表れていると思われる」と評価した。
民間非居住建築物着工床面積(6月)は386万m²、前年同月比7.6%減、3カ月ぶりの減少となった。前年同月比で、事務所は3カ月ぶりの増加、工場は6カ月連続の増加となったが、店舗は先月の増加から再びの減少、倉庫は3カ月ぶりの減少となり、全体で減少となった。
日本政策投資銀行が8月4日に発表した大企業(資本金10億円以上)の平成27年度における設備投資計画調査によると、全産業で前年度実績比13.9%増と4年連続の増加だ。製造業は前年度実績比24.2%増となりバブル期以来の高水準で、非製造業でもインフラ関連の「電気・ガス」「運輸」(鉄道、物流施設等)、不動産(東京五輪等も見据えた都心部大型開発物件等)が増加とのことである。
このように、相変わらず企業の設備投資意欲は旺盛に見えるが、同調査でも「計画には実施不確定な設備投資も含まれ、実績は計画よりも下振れ」し、「近年、実績が下方修正となる傾向が強まっている」と分析している。
甘利経済財政政策担当大臣は「設備投資が過去最高水準にある企業業績に見合った水準に到達していない」旨の批判をしたが、設備投資計画が実際の設備投資や建設投資に結び付くことが引き続き期待される。