通常、請負契約の代金は、工事完了時に支払うのが通例ですし、もし発注者が支払をしない場合などには同時履行の抗弁などにより、完成物件の引き渡しを合法的に拒むことができます。
しかし、店舗、貸しビルなどの新築工事では、後払いの形になりますが、営業売上げやテナントの保証金を請負代金の支払に当てたいとする発注者も存在します。このような場合には、建築物の引き渡しが先行しがちになります。
この場合、建設業者は発注者の支払を担保するため、準消費貸借契約を締結することがあります。これが一般には「引き直し」と呼ばれるものです。
この引き直しは、発注を確保するための営業戦略から考えるとありがちなことですが、引き直しをすると、同時履行の抗弁権はもちろん、法定担保物権とされている留置権も消滅することがあるとする裁判例もありますので(東京高裁 平成26年2月28日決定)、これらの権利に代わる実効性のある人的・物的な担保措置を講じでおくことが不可欠です。
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