元請−下請間で支払いトラブルが発生したときによく話に出てくるのは、支払督促という制度です。この制度は、平成16年に民事訴訟法第382条以下が新設されたことに伴う比較的新しい制度です。この制度の特徴は、請求金額の大小を問わず、全て簡易裁判所に申し立てることになっており、また、申し立てることのできる事項は、ほとんどが金銭の請求に限られています(下請代金の支払請求等がそれです)。この場合の簡易裁判所は、基本的には支払義務を負う元請の住所地を管轄する簡裁で、その申立ては、簡裁の裁判官ではなく書記官に対して行われます。この書記官というところが支払督促手続きの最大の特徴で、このため、申立ての具体的な審査は行われず、相手方が支払義務を認めれば、その後は仮執行宣言の申立てができるというきわめて簡便な手続きです。しかし、それでは、申し立てられた側(主として元請側)の立場が著しく不利ですから、裁判所は支払督促の申立てに基づき、申し立てられた側に支払督促を送付する際には、2週間以内に異議を申し立てることができる旨を明記した書面も同封しています。もし、そこで異議が申し立てられると、支払督促手続きを申し立てた者は、通常の民事訴訟に移行するか否かを判断しなければなりません。
このように、きわめて簡便な支払督促手続きは、異議申立てをされるとその簡便さを失いますし、実務でも異議申立てをされるケースは多いといわれています。
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