建設業法第25条以下に建設工事紛争審査会の設置規定が設けられています。従来は民間発注者と元請建設業者の紛争が多かったのですが、最近では元請−下請間の紛争が多くなってきています。中央建設工事紛争審査会事務局が作成しているパンフレットによりますと、審査会は、工事の瑕疵(不具合)、請負代金の未払いなどの工事請負契約の解釈または実施をめぐる紛争の処理を行うとされています。
そこで、いま急増している元請−下請間の紛争を取り上げてみますと、その大部分は下請代金の未払いです。ですから当然このような紛争も審査会で取り扱うことができますが、元請業者が下請代金の不払いとしている理由が、単に手元資金がないというような場合には、審査会の委員の提案に応じて不払金額について和解に至ることもありますが、通常は、審査会での解決を図ることは難しいものとなっています。もし、審査会での調停手続き(元請−下請間での仲裁合意は極めて稀です)の段階で、なんらかの歩み寄りができるくらいなら、それ以前に両者間で話合いがついているからです。
しかし、差押えなどの手法により強制的に支払わせようとするなら、多くの元請は審査会での審理の打切りを求めます。そうすると、下請側は改めて民事訴訟手続きを開始せざるを得なくなるのです。
つまり、下請代金の未払いトラブルに審査会が効果的なのは、元請が下請の施工瑕疵を理由として、不払いを主張している場合であって、相手方がいかなる金額でも支払う意思がない場合には、民事訴訟手続きが近道なのです。
(一社)日本電設工業協会が発行するメールマガジン『電設業界』は、当協会の会員並びに電業協会会員企業に所属されている方を対象に無料で配信しております。会員/電業協会会員企業に所属されている方であれば登録は自由ですので、是非ご登録下さい。