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2020年度・2021年度の建設投資見通し

2020年度の名目建設投資は、前年度比3.1%減、2021年度は、2.4%減となる見通し

 (一財)建設経済研究所は、日本経済新聞社の「NEEDS日本経済モデル」をベースとして、政府建設投資、民間住宅投資、民間非住宅建設投資の建設関連部門を充実させた「建設経済モデル」を使用し、「建設経済モデルによる建設投資の見通し」を四半期ごとに公表している。

 最新の「見通し」は、本年1月27日に公表したところである。

【建設投資(総額)】

 2020年度は、政府建設投資は、2019年度に引き続きおおむね堅調に推移すると見ていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大が影響し、民間住宅投資、民間非住宅建設投資は、減少し、全体としては名目65兆3,500億円(前年度比3.1%減)、実質55兆8,600億円(前年度比1.5%減)となる見通しである。民間住宅投資の落ち込みが予想よりも小さく、民間非住宅建設投資が微増したので、10月の予測よりも若干の上方修正となった。

 2021年度は、2020年度第3次補正予算案が、「防災・減災、国土強靱化5か年加速化計画」とともに昨年末に閣議決定され、初年度に当たる2021年度については、この2020年度第3次補正予算で、公共事業関係費約1兆7,500億円を含む国費2兆2,600億円、事業費3,500億円が前倒し措置することとされた。

 この補正予算案とともに、インフラ老朽化対策等を含む2021年度当初予算案が現在国会で審議中である。両予算が成立すれば、10月予測で前年度比18.1%減としていた政府建設投資については、2.0%減まで持ち直す見込である。

 民間建設投資については、建築補修が一層減少する見込みであり、その下方修正分が約5,000億円程度と推計されることから、2021年度の建設投資全体は、名目61兆8,000億円(前年2.4%減)、実質54兆3,900億円(前年度比2.6%減)となる見通しである。10月予測よりも名目で3兆6,200億円(6.4ポイント)の上方修正となった。

【政府建設投資】

 2020年度の名目政府建設投資は、2018年度当初予算、第1次及び第2次補正予算、2019年度当初予算及び補正予算による事業等が出来高として実現することから、前年度比4.1%増の25兆8,800億円となる見通しである。

 2021年度については、前述のとおり今年度第3次補正予算及び2021年度予算が国会で承認され成立すれば、減少幅が縮小し、前年度比2.0%減の25兆3,500億円となる見通しである。

【民間住宅投資】

 2019年度は、消費税率引き上げに伴い、前半の駆け込みと後半の反動減、相続税制の改正による貸家建設の投資メリットの減殺、マンション価格の高止まりによる契約率の低下などが影響し、住宅着工戸数は、88.4万戸で、2014年度以来の90万戸割れとなった。

 2020年度は、こうした傾向を引き継ぎながら、年度当初から新型コロナウイルス感染症の影響により、ハウスメーカー等の営業活動が停滞した。その後、回復したが、年度全体としては、前年度比8.7%減の80.7万戸と見込まれる。

 持家着工戸数が昨年11月に16か月ぶりに前年同月比で増加するなど、やや下げ止まりの兆しが見られ、リーマンショック以来の80万戸割れは回避される可能性がでてきたが、いずれにしろ、民間住宅投資額は、前年度比7.5%減の15兆1,200億円となる見込みである。

 2021年度は、企業業績の低迷が、勤労者所得の低下や雇用情勢の悪化、地域経済の停滞につながり、家計を圧迫することなどによって、さらに減少が続くことが予想される。

 年度後半には持ち直すが、0.6%減の80.2万戸と予測する。出来高として投資額が実現するには、契約・着工から一定の時間差が想定されるため、2021年度の民間住宅投資額は、むしろ2020年度の着工戸数の減少が影響して、前年度比4.4%減の14兆4,600億円となる見通しである。

【民間非住宅建設投資】

 2019年度後半からすでに民間設備投資が弱含みにある中、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度4-6月期の実質GDP成長率(季節調整済年率換算)は、「戦後最悪」の年率29.2%減となり、7-9月期は22.9%の急回復となった(内閣府「2020年7-9月期四半期別GDP速報(2次速報値)」による)。

 急回復の内容は「個人消費」「政府支出」「輸出」であり、「民間企業設備投資」「民間住宅投資」はいずれも減少を続けている。また、景気全体として持ち直しの傾向はあるが、水準はコロナ前に達していない。

 これらの動きを踏まえ、実質民間企業設備を2020年度は前年度比11.2%減、2021年度は回復が期待できるが、そのスピードは緩やかであるとして前年度比2.2%増と予測した。

 2020年度の名目民間非住宅建設投資については、製造業の設備投資が2019年度から減少傾向に入っている中で、新型コロナウイルス感染症の影響により、宿泊施設や店舗の減少が予測されること、一方で、いわゆる「手持ち工事」が約11兆円蓄積しており、倉庫・流通施設が好調であることから、前年度比4.1%減の16兆8,000億円と予測した。この見方はおおむね、5月、7月、10月の推計から変えていない。

 2021年度については、景気全体が持ち直しても、企業の設備投資に対する姿勢が慎重であり、鉄道・交通事業者の不振が懸念されるとともに、2020年度の受注の減少が時間差を伴って顕在化すると考え、2.4%減の16兆4,000億円と予測した。

【建築補修(改装・改修)投資(旧「建築物リフォーム・リニューアル投資)】

 民間建築補修(改装・改修)投資については、新型コロナウイルス感染症の影響により、大幅に減少し、前年度比16.7%減の5兆5,500億円と見込む。

 また、2021年度については、省エネルギー対策、防災・防犯・安全性の向上などの建築物の高機能化などへの需要があることから比較的早期の回復を見込み、0.7%増の5兆5,900億円となる見通しである。

【マクロ経済】

 昨年12月8日に公表されたGDP7-9月期四半期別2次速報では、7-9月期の急回復が伝えられ、同じく12月18日に閣議了解された政府経済見通しでは2020年度実質GDP成長率はマイナス5.2%、2021年度はプラス4.0%とされている。

 しかし年明けから緊急事態宣言が発令されたこと等により、経済の先行きには不透明感が増している。特に企業、家計とも投資を控える傾向が強くなっている面がある。

 また、仮に回復軌道に入ったとしても、建設投資は他の指標よりも時間差を持って遅く回復する傾向があることもあり、2月中旬の10-12月期GDP速報等、今後のマクロ指標の動向にも注意する必要がある。

【今回の予測結果】(単位:億円)

2020年度(見通し) 2021年度(見通し)
対前年度伸び率 対前年度伸び率
 名目建設投資 633,500 ▲3.1% 618,000 ▲2.4%
 名目政府建設投資 258,800 4.1% 253,500 ▲2.0%
 名目民間住宅投資 151,200 ▲7.5% 144,600 ▲4.4%
 名目民間非住宅投資 168,000 ▲4.1% 164,000 ▲2.4%
民間建築補修(改装・改修)投資 55.500 ▲16.7% 55.900 0.7%

注)政府建設投資は、政府建築補修(改装・改修)投資を含む。

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